【米国株バブル】米国債格下げから連想される可能性を考える
この記事の結論
- リスクフリーレートが高いのに株価が落ちないのはなぜか?は気にするべき。
- 「米国株の成長を全取りしたい」という欲張り思考は罠になる可能性。
この記事のポイント
- 米国10年債利回りは2007年(リーマンショック直前)以来の高水準。
- 国債利回り(一応のリスクフリーレート)が高止まりする中、米国株価格が維持されていること自体がバブルでは?
- 実質金利(金利ーインフレ率)はまだ上がり切っていないと反論は可能だが、こちらもリーマンショック時並み水準。
何があったのか? - ムーディーズが米国債を格下げ、2025年5月16日
ムーディーズを始めとした主要格付け機関が、相次いで米国債の格下げを行った。それほどに米国財政は深刻実を増しているということだ。
現に米国が抱えるいわゆる「双子の赤字」は深刻さを増す。更にトランプ大統領による乱脈的な関税政策は、米経済及び米ドルに対する信任不安を招いている。
米国10年債利回りは、2025年1月14日に一時4.79%まで上昇。これは2007年以来およそ18年ぶりの高水準の国債利回りである。その後も利回りは高止まりしており、2025年5月15日時点では4.45%を記録している。
本来は「株ではなく国債を買えば良いのでは?」となり、株の魅力は落ちる。
それにもかかわらず、米国株推移は2025年5月19日早朝(日本時間)現在、堅調である。
その説明として当然考えられるのが「バブルなのでは?」という疑念だ。
実際、各報道機関では、通貨・株・国債が同時に下落する「トリプル安」を警戒する論調を発信している。それでも米国株の価格を支えているのは、AIブームに伴う成長期待や金利のピークアウト期待といった淡いものである。
このような局面において、S&P500投信を中心とした米国依存を強めている我々個人投資家は、姿勢の転換をしなくてよいのか?という問題意識を感じざるを得ない。
実質金利は2%前後で推移
実質金利(名目金利ーインフレ率)は2%と、まだそこまで急激な上昇は見せていないが、リーマンショック前水準には達している。

尚、実質金利は、プラスなら「お金を貸せば物価上昇分以上の利益が得られる」ため債券の魅力が高くなり株にはマイナス要因。実質金利がマイナスなら、「預けても物価のほうが早く上がる」ので、現金や債券よりも株や不動産などが有利になりやすい。
過度な米国信仰を捨て、適切な分散投資がポートフォリオを救うかもしれない
いずれにしても重要なのは、リスクフリーレートをベースとした解釈を行うと、理屈的には異常水準(バブル的)だが、構造的前提がそれを支えていると言える点である。
これら前提が崩れ、「インフレ再燃」や「金利が長期的に高止まりする」という懸念が着火した瞬間、急落が発生する可能性がある。世界首位の米国でこういったパニックが起きてしまえば、全世界的に莫大な影響が広がることは間違いない。
我々個人投資家にできることは、米国株信仰ともいえるポートフォリオの偏りを定期的に反省し、欲張りすぎず、適切な分散投資を行うことである。